恋骨(こいこつ)
夕焼けを九等分
いずれ化けるは魑魅の子
「これがその胸焦がす愛慕だとはだれもいっていないぜ」
桜貝は春をくだすの
生首に接吻嵐の季節
てふつがいの野墓
まがいものの紫、まがいものの朱を返して
か弱いものだから好きだよ
昏いのは怖いかい、オレだけ見てればいいだろう
死人と下手人じゃ笑えちまう
フィラメント電球みたいにすとれいとかな
へそのとなりまでじんじん
あたりまえのように影の一つになった
いつか蝶にとらわれたまま君を殺す
一輪の水仙じゃないんだから
(わたしが己を愛するものか)
そうだ。夢はまほろば、過ぎたこと。そこかしこに隠る過ぎ事。
三万六千五百日前の創
そのままわたしをかすめてよ。
俺にだけ許されず、俺にすら愛されず、弱いもの
晩夏に帰郷する声を追っている
君にかかれば房事すらみじめだ
渡し守の入水
睦言ならば自由になるから
ほどなく負けるものに報う必要なんざねえよ
零れ出るお前
染め上げの私
陰陽だけ差し上げましょう
「もし俺が今より二秒早く生まれていたらどんなことをしたってきみを裂いたりはしなかった」
お互いの寝息さえさわれなかったよ
高潔はひれ伏して声を荒げる
湿気た夜と結びつく
残酷な七又大蛇に惹かれてる
骨のひとつまで、いのちひとつまで、あなた様の糧となりましょう
研ぎ切ったお前をくれよ
でもね、口づけは許せないの
これが天狗のためのお墓だろ
からからと輪を回す、誰がために、またの再開を待ちわびて
輪廻はエンゲージリング
日々を重ねてはあなたを待っていたよ
年の瀬は走り、年の差は動かず
僕なら二度目は無いのに
水子の世迷言
ただただ僕の後ろを見ないでよ
昼一つ夜の千億に魅入られて
情につけこむならヒルガオが一番
微笑みは晦日の夜に落ちている
孤独に引きずられ涙が出る
「これは浮舟、沈めど浮かぶ君のための裂かれ舟」
虫三寸だって見殺すのに
(だから鳳凰の止り木は枯れてしまった)
如来ですら救うまい
火の見やぐらより愛をこめて
ほら、あなただってむせぶじゃないですか。
無限宇宙のホリデイドーム
きみを動かすは腐りきった帰巣本能
そうだ足がすくむのは相容れないから、またたくのは凝らせないから、いつもそこにいるぬばたま。
エニウェイ、アイシーユー
どうぞわたしのどくろになって
海の魚は溺れない
最後の海水はしょっぱかったな
おんどりみたいに平和な恋をしましょう
あなたに愛されるあなたになりたいんだ
ぬるま湯に浸らないならあなたは何℃なの
いつもいつもだれかを夢でころすだけ
水無月を覆う頭蓋骨になれればいいのに
まるでわたしがガラスみたいに呼ぶんだね
一思いに汚れろ
浅葱色に染めぬいた瞬きを忘れないで
人は優しさで助からないことくらい知ってますよ
浪漫神楽
無垢を知らないキミがいい。
左足が良人
まことのすくいなら代りはいるのです
牡丹雪をちぎって、のどをならして
溝の中私たちのきよいきよい飯事
いくたび犠牲者を括ろうとも、あの日こびりついた断末魔が落ちてはくれないのです。
よく生きてるね、脆弱な人間
あの喜びを統べるのは白夜の皇帝
キミには春しか求めてないよ
決して飾られはしないひと
御髪彩る綺羅だって捨てたのに。
それ以下ではないのにそれ以上にはなれないのよ
細い声で秋波を送れっていうの!
(アンタなんかには稲妻の心変わりだってわかりゃしない)
「あなたのうつくしさは足元にあるじゃん」
珊瑚色のまほろば
あれはわたしののぞみではない
ひと刺し指で紅をさすということ
蓬莱はそこにありもしないと知っていた
尾をふる雌豚の何が悪いんだか