どうやら彼はきみの名前を知っているらしい。きみは彼の名前を知らない。
故々夏はうとまれるのです。
しかめつらの鳥居をみたことがあるかい
おかえりなさい見知らぬ君よ
カタカナが過多過多
もしも俺が白群の海に沈んでも
朱いろ横丁にて
常夜灯の提灯
ふるきよきバビロンによせて
「きちんと神様にあいさつしないと」
数千年境界の話
旧校舎の母校には今は見えない鏡があった
乳臭いあなた
林立するわたし
海のフロッピーディスク
何もない子供たちはアヤトリと遊ぶのだ
青抜きの天井がうたう
いつからここへ、いつまでここへ
無情に屠るべきものを、布越しに追いやるものを、どうしても捨てられないのです
エーエム三時十四分の笹船
「背筋が真っ直ぐな子になりますように」
コントラストで日射病になりそうだね
手のひらに収まるのはきみの町?
ひとりでいっちゃあいけないよ
目をつぶりながら捜しものをしていた、なんて
勘違いでまっしろに見える
石の上の鋩
冬休みが見えないんだ
少年はみためより遥かに聡い
缶けりのふちで足を切った
せなかになにかあるほうが好き
横文字の虫たち
私たちは成功にしか賭けていないわ
彩り駄菓子の賽銭箱
これが実感を伴うカルマ
夏電車のむぎわら席
幾年かけてくりかえして捜してるものはおまえじゃないんだ
(解脱を願うべきことを私は)
留紺で先を望むな
窓の外の家々はきみにはとても懐かしい。
虎が威を借るべきなのだ
木製電柱に寄り掛かった、あなたに愛をささやく
いっそのこと、はお前だけに抱けるそれだよ
(なあ、いっそのこと賭けに負けようか)
みじかみじかのサイダーバブル
ちぎりを、縁を、終わりを、実りを。 結ぶ
カタビラサマのおなり。
きみはいつだってきみでいてくれないから
I know you never, I love you ever.
価値ヶ夜(かちがや)
墨色の髪の焼ける肌の細い足の誰かさん
無償の愛があるのなら、俺はそれと添い遂げたい
鬼門側の希望
それぞれがうつろうそれぞれの賭け事
「誰よりなにより俺が言いたかったんだ。叫びたかったんだ。のどが破れるくらい。冬の空気で唾が涸れるくらい。身代わりなんてできないくらい。」
まあるいアルミニィウムだって受け取ってくれない
一昨々年、なにを以て笑うのか。
ここに一つの愛の燃えかすがあるけれど
あなたの目の中だけで笑うんだね
かかとはつめたいのに、(のどがひどく熱い)
名場面は繰り返す
脈打ってくれるのなら、後を振り返っていい!
町は少年の声を悼む様に
お天道様をはらむ願をかけたの
そのほうがかみさまはよろこぶのよ
しめ縄の中でキスして
この世は全身全霊で君を愛してる
お前の指先はうつしよを指していて
アンダー・ア・テンショウリンネ
この夏だけ子供でいられる
片恋はもう実っていたはずだけれど
陽炎の列車まであと三回
あなたさまの足元に時間は凝っているから
もう一度臆病者の繰り言を
ぬばたまの夜は隣にいさせてもらってもいい?
ああ、アンタってもういくつになるの。数えきれないわ
「舌は乾いて、秋が来るよ」
白梅のクラスメイト
「今度は俺が君をわらうよ!」
ほのおの上にはだし
すでにあなたさまの狐
俺以外にも凝らさなきゃだめかい、どうしても?
あんなところにいるのは辛かっただろうに
暗む汐の恋人
彼の前で蜘蛛をころさないで
救いと見せかけじゅるじゅるり
ハスの四十二
透明に近い目が利く
橙の隠逸花が手を取った
指あとには慈悲がこびりつく
当事者はあなたじゃない
鹿の抜け殻、樹皮の枝
二月まで行きたかっただろうに
「僕に春をくだされば」
牛の舌には歯は生えるのか
穢れを踏んだブーツで石段を歩かないで
翠梅(すいばい)
月夜に未夏
この身、水鏡に立つればと
のどのつるぎをご覧にいれよう
七とわたくしに分かれました
錆びた鉄塔に犬は吠える
お強い、お強い方でした
鯉がなびけば水は跳ね、いずれは藍に染まるのです。
鄙びのおんどり、鳴くときは
冷え冷えの雷様
薄桃の紅を捨てましたが
はじまりの来ない恋だからこそ
踏切の女学生
いかずちを三つ編み
在りし日のニイニイゼミ
たった一人雷鳴で鼓膜が震えはしない
あるべき姿のぬけがら
でんでろででんの花房
お願いよ、艶めいた息のままその敷居を越えないで
俺ののどの中で君は、
すでにそこにあった時の顔面
「愛をゆすってるのよ。ねだっても手に入らないから。」
女性恐怖症の悪癖
りんご飴と、ランドセルと、紅梅
最善も嫌い
しずくが体に沈むならばと
君に萌黄はよく生える。
おどるのは粗悪品のインク
爪あとは紫
俺の後ろにだれをみるの
「いつかいつかきみもおんなじになるやもしれない」
ふりかえれば足引く縁色
私からしてみれば同じものです
同病愛憐れむ
ふしぎにむせびなき
悲観で結びつく私でいて
時の止まった理は己のせいだと嘆くな
薄情な幸せを捨てられないのは、
四ツ目のサルは齢を歩く
むかしのはなしはきらいよ
「さいの目に合わせて君は綺麗だ。」
ただひたすらに荒れた君の手を見たくなかったこと。
(それをするのはぼくだけでいい)
一年間の待ち時間
とっても不確定にあいしてた
葬式ってやつは卑怯だよ
狛犬は瑪瑙を食む
にぶく貪食の二子
あわせ爪が溶けては交る
らでんでらでん
盛夏の水無月おろそかに
マッチの炎は稲穂色
夕焼けにかすむ少女がいい
ちりちりのひな流し
そうだこれはお前のネイルカラーと同じ臭いの依存
辛いほどに大人な処方箋
どのツラ下げて破瓜を語るのか
暗さも、黒も、夜だって知りません
ほんとうはぜぇんぶ願掛け
病床にこぼれた曇り空の桜花弁のよう